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aska_burnishstone's diaryのコメント集、【他】

【読書】   中島義道 / ウソつきの構造

 

昔に比べて全く哲学書が読めなくなった。

 

まず本を読む時間がない。

昔に比べて目が明らかに悪くなった。

集中力が続かない。

 

全部言い訳だが、

本当に哲学書が読めなくなった。

 

昔はある概念を研ぎ澄ますように

本を読んでいたが、もう時間がなさ過ぎてできないし

正直言って、現在の私の能力ではこれ以上先に行けないことは

わかっている。

 

能力を開発するための資源が私にはない。

 

だから読書は

ゆとりができるまでやめることにした。

 

というわけで、新書程度であれば

読めるのではないかと思って取り組んだのがこの本。

 

ウソつきの構造 法と道徳のあいだ (角川新書)

ウソつきの構造 法と道徳のあいだ (角川新書)

 

 

久しぶりの中島先生の本であるが、先生の理論的発展は0に等しい。

 

中島先生のパレーシア論を

時事的に展開しただけの一般書に過ぎない。

 

ご存知のように、

中島先生は天下の東大法学部を経て哲学者になられた方であるが、

法学部で学んだ法律論を哲学でなぎ倒そうとした本。

 

【哲学】 中島義道 / 明るいニヒリズム - 77のブログ

 

おそらく角川の編集者から

「先生の自伝も絡めながら、一般人にもわかるように

哲学について語って下さい」とかつまらないことを言われて

無理矢理書かされたのではないかと思えるほど出来の悪い本。

 

なんでこんな本を出版したのだろうか?

 

「70歳の絶望」もそうだったけれども、

角川から出てくる新書はものすごくつまらない。

 

【哲学】 中島義道 / 七十歳の絶望 - 77のブログ

 

もう角川と仕事するのはやめたらどうか。

 

この本の言いたいことはただ一つ。

 

「ウソつき」とは、

自分が真実を語ると損をする状況において

適法性をもってすべての基準とし

それ以上道徳性を追究することがない者

真実に対して尊敬を抱くことがなく、何にせよ法的に正当化されれば

それで問題はないとする者、しかもこのことに対してとりわけ

良心の呵責のない者のことである。

 

以上の定義に基づいて

時事的に様々な具体例を挙げながら

真実性の処方箋を陳列するだけの本。

 

以前書かれた「悪について」を敷衍させた内容と言える。

 

悪について (岩波新書)

悪について (岩波新書)

 

 

中島先生のパレーシア論は

「悪について」ですべて出尽くしているように思える。

 

バートランド・ラッセルの自伝を読んだ際に感じたが

高齢になると、エッセーのような本が増えて硬質な本が書けなくなるのかなと

思った。

 

仮にそうだとしても、

私は中島先生にそれを期待したかった。

 

私は中島先生に哲学を教わった。

直接教わったわけではないが、著作から教わった。

生の哲学には興味がないが、哲学する姿勢を教わった。

パレーシアとは何かを教わった。

 

そして、現在

その延長でプラトンの「ソフィステス」を読んだり

ハイデガーの講義録を読んでいる。

 

プラトン全集〈3〉ソピステス・ポリティコス(政治家)

プラトン全集〈3〉ソピステス・ポリティコス(政治家)

 

 

先生から学んだパレーシア論を

もっと深く掘り下げれないだろうかと常に考えてはいる。

 

今回の先生の本から学ぶことはなかったが、

それでもこの本が私の人生の中枢に位置する。

 

「真実は真実であるために真実は求められるべきである。」

 

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)

 

 

哲学者ソクラテスソフィストとして処刑された。

弟子プラトンは「ソフィストではない」という規定によって

哲学者を定義し、師の生き方を証明しようとした。

哲学とは何か。