77のブログ

aska_burnishstone's diaryのコメント集、【他】

【哲学】   中島義道 / 七十歳の絶望

 

七〇歳の絶望 (角川新書)

七〇歳の絶望 (角川新書)

 

 

久しぶりに本を購入した。

 

最近、文庫化ばかりなさってる

中島先生の新刊である「七十歳の絶望」である。

 

【哲学】 中島義道 / 明るいニヒリズム - 77のブログ

 

以前、お書きになった

「観念的生活」のような

日記の形式を取った書籍である。

 

面白いか?と言われれば

正直言って、あまり面白い本ではなかった。

 

というのは、

日記の形式で、趣味の油絵の話、

家庭内の揉め事、旅行の話、病気の話、

気晴らしとして市井の人との喧嘩、

最近出版なさった本の話が淡々と語られるだけで

哲学的発見として新しいものはあまりないからだ。

 

中島先生が油絵を趣味でなさってるという話は

実はこの本で初めて知ったが、一年前ほど哲学塾に行った際に

教室に大量の油絵が置いてあった意味がわかった。

 

授業のないときに、アトリエとして

画家に教室を貸してるのかと思っていたが、実は違って

中島先生ご自身が30年前から油絵を描かれてるとのことだった。

 

家庭内の揉め事、市井の人との喧嘩も

以前書かれた内容とほぼ同内容であったため

あまり面白くなった。

 

というより、私はおそらく

先生のプライベートに興味がないのだと思う。

 

先生は日本における騒音を

やめさせようと必死になってるが、

私にはまったく理解できないし、理解するつもりもない。

 

気晴らしとしての市井の人との喧嘩を

中島先生のエッセーの楽しみとしている人もいるが、

私はまったく楽しくなく、何一つ共感できない。

 

「観念的生活」のような

哲学色の強いエッセーを予想して購入したが

まったくの期待外れだった。

 

ちなみに、私のおすすめの本は以下の本。

 

【仕事】 おすすめの文庫・新書 - 77のブログ

 

確かに哲学色がまったくないわけではないが、

最近出版された本の自己解説程度に留まっているため

最近出版された本をちゃんと読んでる人にとってはほぼ学ぶことはない。

 

 

ただ、一つだけ勉強になったことがあった。

 

カントの実践理性批判に関する記述である。

 

カントの洞察の底にあるものを反省してみれば、

われわれが自他に対していかなる責任も追及しないのだとしたら

言い換えれば、行為の後に悪い選択をしたといういかなる後悔も、

よい選択をしたといういかなる満足もないのだとしたら

あらゆる行為は「自由」という意味を失うということである。

すなわち、私がAという選択肢と~Aという選択肢とのあいだに、

いかなる「よりよい」という価値比較もなければ、私が

自由意志でAを選ぶとしても、それは私がAを選択するように

決定されていることと、何の変わりもない。

というのも、私が自由意志でAを選んだとしても、

あらゆる観点からして、それは私が~Aを選んだことが

「よりよい」わけではないのだから、私はむしろ偶然

Aを選んだにすぎないと言った方がいいであろう。

 

この場合、「自由」のもつあらゆる積極的意味は消える。

そして、カントのように無原因を認めないとすると、

それぞれの行為には原因があったとしても、とはいえ終わってみれば

一通りの系列をなしている。

すると、少なくとも過去の行為においては、私は

この一通りの系列を選ぶようにあらかじめ決定されていたというのと

変わることはない。

というのも、私はいかなる過去の行為も後悔しないのであるから、

私は行為に出るたびにこの一通りの系列以外の選択を

「なしえた」ということは、「この部屋の外は無かもしれない」という

ただの空虚な「論理的可能性」以上のものではなくなるからである。

 

 

この記述を読んで決定論を採るスピノザを思い出した。

 

【哲学】 盗まれたメモ② - 77のブログ

 

「定理六八
 もし人々が自由なものとして生まれたとしたら
 彼らは自由である間は善悪の概念を形成しなかったであろう。」

 

中島先生は近々、カントをモデルにした「哲学者の晩年」と

カント、キルケゴールサルトルを中心に「神との抗争」を

テーマにした「絶望と反抗の哲学」をお書きになるようだ。

 

「哲学者の晩年」は面白そうだから買うかもしれないが

「絶望と反抗の哲学」は買わないだろう。

 

中島先生は、カント以外の哲学者についても

いろいろと書かれているが、面白いと思えた論考があまりない。

特にニーチェ絡みの本はつまらなかった。

 

中島先生から学ぶべきは

生の哲学と、やはりカントだと思っている。

特に先生が生きておられる間に

カントだけは教えていただきたいと思っている。

 

【仕事】 やるべきこと - 77のブログ